伊藤由希子(以下、筆者)著『仏と天皇と「日本国」――『日本霊異記』を読む(以下、本書)』(2013年、ぺりかん社)の書評。冒頭で「日本国」における「聖」と「凡」との相互交渉という視点から仏教説話集『日本霊異記』を分析しようとする筆者の学問的立脚点を確認した上で、本書全体を概観。「テキスト内在的」読み込みにより、これまでの文献実証的手法では明らかにし得なかった『日本霊異記』の一特質が明らかにされた点を評価する一方、本書が周辺領域における諸研究への目配りに欠ける点に起因する問題点をも指摘する。
pp.212-217