(報告発表)最澄の言語観――三国思想との関わりで――
日中若手フォーラム(於, 中華人民共和国・北京外国語大学日本学研究センター)
最澄はその晩年、三一権実論争と大乗菩薩戒壇設置という二つの大規模な論争をほぼ同時並行的に展開する。その際に注目されるのが、最澄の著作における不空関係の文集『代宗朝贈司空大弁正広智三蔵和上表制集(以下『表制集』)』からの積極的な引用である。不空との師弟関係を有しない最澄が『表制集』を重視したのは、自身の追究する新たな仏教思想に抵触する中国護国仏教に代わる新たな根拠をインド由来の密教に求める点にあったと思われる。その過程で、最澄は不空一門の重視した梵語観に強い影響を受けることとなる。