執筆箇所「はじめに」(p.4-11)「吉祥天女像が喚起する天平人の〈信〉――和辻哲郎『古寺巡礼』における『日本霊異記』理解が示すもの」(p.134-155)
【書籍概要】
奈良時代から平安時代中期に撰述された仏典注釈や論書・説話集などの文献資料。もともとは印度の言語(梵字・悉曇)で記されたこれらの資料はどのように漢語や和語に翻訳され、どのように日本文化に受容されていったのか。『万葉集』『日本霊異記』はもとより、記紀・神話・平安期の漢詩文や女流文学、近代の哲学者・和辻哲郎まで幅広い視点から、仏典注釈から発信された知識が日本文学・思想・文化へ与えた影響を解明する。
【「吉祥天女像が喚起する天平人の〈信〉――和辻哲郎『古寺巡礼』における『日本霊異記』理解が示すもの」概要】
『日本霊異記』中巻十三は、吉祥天女像に対する優婆塞の愛欲が信心へと昇華されていく過程を主題とする。和辻哲郎は薬師寺蔵・麻布著色吉祥天像に対し、同話の内容を念頭においた解釈をおこなった(『古寺巡礼』)。信仰と芸術鑑賞とを峻別する和辻の教養主義・人格主義的態度は、図らずも優婆塞同様、尊像を介した宗教的悦楽をもたらすに至る。