【背景】新型コロナウィルスの世界的な流行により,研究者が所属する大学では厚生労働省及びソーシャルワーク学校連盟のガイドラインに従い,実習協力施設の意向を踏まえた慎重な検討を行った結果,2020年度は全面的に学内で実習を行うことになった.この学内実習は,通常の実習と同様に,23日間180時間以上の時間数と「職場実習」「職種実習」「ソーシャルワーク実習」の3つの段階で構成し,実施方法は,学内オンライン学習システムとWeb会議ツールを使用したオンラインによる実習を中心とし,実習指導者である社会福祉士等によるライブ及び録画による講義などを組み合わせ, 6つの領域別プログラムを計画実施した.
【目的と方法】オンラインを中心とした学内実習の学びに対する学生の評価の実態把握と,実習後の学生のワークエンゲージメン(WE)に関連する要因の検討を目的とし,2020年8月から9月に実施した学内実習に参加した学生210名を対象とし,同年12月7日から28日の期間にWebアンケート調査を実施した(回収数151 回収率73.9%).質問項目は,主に①調査対象者の基本属性(性別,実習領域,実習以前の経験,就職状況など),②実習環境(インターネット環境,学内システムの習熟度や使用感など),③学びの評価(WE (UWES-S-J),実習から得た社会福祉の仕事へのイメージ,実習満足度,実習理解度など)で構成された.本報告では,③のデータを分析に使用した.
【結果】実習から得た社会福祉の仕事へのイメージについては,77.5%が肯定的な影響を受けていた(M=3.91 SD=0.69).実習満足度については,66.3%が満足と回答し(M=3.71 SD=0.80),実習理解度の合計点は最大105点に対して平均79.15(SD=11.78),WEの合計点は最大70点に対して平均38.97(SD=13.33)であった.単相関分析の結果,WEと3つの変数間にはそれぞれ正の相関があった.WEを従属変数とした重回帰分析の結果,実習から得た社会福祉の仕事へのイメージと実習理解度が統計的に有意な関連性を示していた.
【考察】結果から,学生が実習を通じて社会福祉の仕事に肯定的イメージを持てること,実習で学んだことの自己評価が高いことが,実習後の学生のWEを高めることに関連していると考えられる.今後は,同様の調査を通常実習において実施し,両者の比較を行うことが課題である.