これからの教員に求められる資質能力として,「授業力」「生徒指導力」「子ども理解」等が挙げられる。昨今のいじめや不登校等の生徒指導上の問題については,早期発見・早期対応,問題行動の未然防止等が強調されている。心のケアへの対応,教育相談やカウンセリングの知識や技能を身に付けること,関係機関との連携,組織的な対応についても各自治体から出される答申等に盛り込まれている。それらの答申等には,積極的に大人が「教える」「育てる」という視点が強調されてはいるが,子どもを「受け止め」「認める」とい視点は少ない。
本稿では,中学校現場での事例と生徒指導論の講義で扱った河合隼雄著「子どもと学校」にかかわる学生のレポートから,子どもの「今ある姿」「存在」そのものを「受け止め」「認め」,生徒指導の目的である「自己指導能力の育成」には,教員にどのような資質能力が必要であるかを論ずる。