本研究では、運動する物体の大きさと、それに付随して運動する聴覚刺激の音圧の大きさを組み合わせた時の速度知覚への影響を検討した。その結果、音圧が大きくなるほど、運動する聴覚刺激の速度が実際よりも速く知覚されるという速度錯覚が示された。また、視覚と聴覚の速度錯覚を組み合わせた場合、視覚における速度錯覚 (ブラウンの法則) は聴覚刺激の影響を受けないことが示された。これらの結果は、音圧の大きな聴覚刺激が物体の視知覚を過大視させ、ブラウンの法則が働き、運動物体の速度が遅く知覚されたことを示唆する。
竹島康博、行場次朗、柴田理瑛