論文

基本情報

氏名 高野 毅久
氏名(カナ) タカノ タケヒサ
氏名(英語) Takano Takehisa
所属 総合福祉学部 社会福祉学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

「緊張型から破瓜型への移行期に多様な精神病症状を呈した統合失調症の一例 演題発表要旨」

単著・共著の別

単著

概要

統合失調症の急性期と慢性期の病態は、基本的には脳の病気に即して考えることが可能であり、急性期(緊張型)から慢性期(破瓜型)に移行する亜急性期段階は、幻覚妄想は元より人格障害から神経症を経て精神病に至る百花繚乱の病像と多様な経過が展開する、言わば通過症候群に相当する[濱田2002]。
今回演者は、無言無動の緊張病状態で転院してきた10代発症の統合失調症患者(当時26歳、男性)にECTを施行して急性期(緊張型)を脱してのち、次第に慢性期(破瓜型)へと移行する亜急性期段階で、この多様な通過症候群を経験した。薬物療法併用下(セレネース7.5㎎ オランザピン20㎎)で、リハビリテーションを楽しみながらも、言語幻聴、考想化声、運動性考想化声[関・中安2006]、考想伝播、考想察知、人物誤認、実体意識性、被害妄想、罪責感、生活史健忘、内界意識離人症、常同的絶叫、アンヘドニアなど多様な症状が消長した。現在、外来通院を継続して18か月になるが、無為閉居に近い慢性期(破瓜型)の状態で安定して推移している。
本症例における通過症候群には、ECTや薬物が奏功せず、多様な症状が折り重なりながら一過性に消長し、やがて破瓜型として安定を取り戻したことから、これらは侵襲に対する本症例なりのレジリエンスとみることも可能であり、その際、例えば[濱田2013]に示されるような層的評価と経過を統合した単一精神病論的な動態論が、治療を考える上でも有用であると考えられた。

発表雑誌等の名称

日本精神病理学会 臨床精神病理

発行又は発表の年月

201804