その他

基本情報

氏名 高野 毅久
氏名(カナ) タカノ タケヒサ
氏名(英語) Takano Takehisa
所属 総合福祉学部 社会福祉学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

タイトル・テーマ

負の誇大性が目立つ罪業妄想を呈した高齢期発症のうつ病の一例

単著・共著の別

その他(発表学会等)

発行又は発表の年月

201810

発表学会等の名称

第41回日本精神病理学会神戸大会

概要

X-1年、自営する工場の一部を閉鎖したことから、興味関心の減退、食思不振、体重減少、不眠、罪責感、が出現し、社員の退職を契機に、「カネがないので給料が払えず、社員とその家族を餓死させた。」という貧困妄想に基づいた通報をしたことから、X年、当院医療保護入院となった。「既に300人殺された。自分の犯した犯罪のせいである。」「警察が自分を捕まえに来ている。人が大勢集まっていて釈明に行かなければならない。」と確信に満ちた言動をした。「腸にピンポン玉が詰まっているので便が出ない。」という心気妄想も見られた。操作的には、上記診断基準を満たし薬物不耐性であったため、ECTを施行し速やかに寛解した。リハビリとして、嗜好に合わせて麻雀とパットゴルフを施行したが、戦略性と粘り強さを発揮して勝ちにこだわった。流涎やふらつきがあっても律義にリハビリを継続して自宅に退院した。X+1年、「30年間に200億の不正な蓄財をした。」「前代未聞の犯罪で今日逮捕され、明日新聞に出る。」という訴えで再発し、警察に自首しようとして再入院した。「1兆円の罰金を科せられて、家族は全員死刑になった。」と、笑みを含んだ表情で主治医を呼んだりした。ECTで改善したが、心気妄想は残遺した。X+2年にも、同様の経過で再発し、ECTを2クール施行したが、「ブック(フェイスブック?)が、いろいろ言ってくる。」という世界規模の?幻聴が残遺し、好褥的に経過した。
「負の誇大性」は、妄想型うつ病に関する阿部隆明の諸論文(1990, 2000, 2002)で考察された概念であり、妄想の成立によりうつ病の症状が安定を得る、という指摘は本症例にも当てはまるが、高齢期発症という点で、病像形成や治療反応性の経過に修飾が加わっている。そのあたりを考察したい。