これまでに薬の飲み残しや多剤併用による残薬に関する報告が多数なされているにも関わらず、実際に廃棄される薬に注目した研究は少ない。また、これまでの研究報告は主に在宅患者に関する報告が多く、病院等で廃棄される薬に関する報告も少ない。そのため、本研究では東北福祉大学せんだんホスピタル(診療科:精神科、児童精神科、内科、神経内科)の病棟(児童思春期病棟、静養病棟、急性期病棟)で廃棄される薬の種類や要因を検討した結果、廃棄薬は中枢神経作用薬、消化器系作用薬、抗炎症・鎮痛・抗アレルギー薬の順に多かった。廃棄された中枢神経作用薬の内訳は抗精神病薬、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬の順に多く、消化器系作用薬の内訳は塩類下剤、大腸刺激下剤、消化管運動改善薬、胃・十二指腸潰瘍治療薬の順に多かった。病棟別比較の結果、急性期病棟では中枢神経作用薬の廃棄が7割を超え、静養病棟では中枢神経作用薬と消化器系作用薬の廃棄がそれぞれ4割を占めた。児童思春期病棟では他の病棟に比べ抗炎症・鎮痛・抗アレルギー薬の廃棄が多かった。当院は精神疾患の治療を目的とした入院が大半を占めることから、中枢神経作用薬の廃棄薬が最も多かったと考えられる。特に急性期病棟では入院初期の服薬拒否が理由で廃棄される例が多く、患者が納得し服薬できるような働きかけ、与薬タイミング及び剤型の工夫が求められる。消化器系作用薬は日々の排便状況を看護師が観察し、症状によって除剤・廃棄される例が多く、可能であれば消化器系作用薬の頓服薬への切り替え提案等が必要であると考えられる。
小野木弘志、佐藤慎、菊池恒明