東日本大震災から12年が経過する中,被災者の社会的孤立を深めず,予防的な支援を実施していくことが被災地の支援者に求められている。本研究は,災害公営住宅に転居した被災者の社会的孤立に焦点をあて,S市A地区の支援者の社会的孤立に対するこれまでの取り組み状況と課題(連携や仕組みづくりなど)について理解することを通じて,地域における予防にむけた取り組みの在り方について示唆を得ることを目的とした。調査方法は、災害公営住宅を含む地域の被災者支援へ携わってきた地域関係者と専門職の計5名に対し,当該地域がこれまでに抱えてきた課題とそれに対する取り組み等を振り返るフォーカスグループインタビューを実施し,語りの質的分析を行った。
分析の結果,支援者は互いに連携しあい,被災者の心情を思いつつも地区内住民と同じく被災者を受入れ,孤立孤独の解消に向けて取組み,個別ケアを中心に被災者のニーズを優先する支援を展開していた。一方,行政による被災者支援は自立に向けた施策が強調されており,高齢化する被災者を取り巻く新たな課題が明らかとなった。これらの結果を基に,【当事者本位の支援】【伴奏型支援の継続】というカテゴリーを中心に,今後の孤立予防のあり方について考察した。