災害公営住宅の高齢入居者のquality of life(QOL)に影響を与える現在の環境の特徴を包括的に明らかにすることを目的に、2022年9月初旬、A市B地区の災害公営住宅の高齢入居者8名を対象に、当該住宅の集会所で基本情報の収集と包括的環境要因調査票(Comprehensive Enviromental Questionaire;CEQ)を実施した。 CEQのスコアを算出し、CEQ実施時の語りから作成した逐語録は計量テキスト分析ソフトKHコーダーversion3を用いて、階層的クラスター分析を行った。
分析の結果、対象者の平均年齢は78.38±7.23歳。男性3名女性5名、単身生活者は5名。すべて公営住宅稼働当初から入居する自立生活者であった。CEQの平均スコアは合計40.37±4.80点。「十分ある」「ある」の回答で100%となった環境は「医療・福祉サービス」「友人・知人との関係」「外の人と自由に通信できる」で、「全くない」「少しある」と63%が回答したのは「経済的に安定している」「一緒に生活する人がいる」であった。17,479字の逐語録から「家族や友人と会えている」「制度と家賃」「集う人の減少とコロナによる集いの制約」「町内の人や情報の問題と,年金生活者の経済」「生活問題と役所」の5クラスターが生成された。
現在の災害公営住宅の包括的環境は概ねバランス良くあり、家賃など経済的な不安と町内活動の難しさが共通する認識と考えられた。