本研究では、実践現場で実習教育におけるICT活用の成果と課題について調査・分析することを目的とする。本研究の成果をもとに教育や実践現場におけるICT活用教育の課題と可能性を探り、今後の実習指導に生かすことが期待できる。
結果として、ICTの活用については、遠隔会議システムがやはりその代表であり、コロナ禍以後の現場への導入がそれを表わしている結果となった。現場で導入しているICTの用途についても、「外部研修への参加」が最も多く、次いで「外部機関とのケース会議」という結果から、遠隔会議システムが現状でのICT活用の代表例となっていることがわかった。
また、相談援助実習におけるICT活用においては、実習前・実習中・実習後の3つの段階から調査を行ったが、現場の対応は、現場におけるICT環境の整備が工夫した点として多かったことから、養成校から、どの段階で、何を、どの程度の水準で行うことを推奨するか、或いは要請するかということで決まってくるのではないかと感じる結果となった。さらに、本調査では、コロナ禍においても例年同様の相談援助実習を行っており、実習における実習指導者・養成校・実習生の三者関係における諸手続きに関しても例年同様に行っていた者が多いことがわかった。なお、現場はICT活用のメリットを感じているものの、今後の設備投資の検討には消極的であることから、ICT活用のデメリットやその他の要因を勘案して優位であると整理する段階ではないと言えるのではないか。しかし、特に遠隔会議システムにに代表されるように、「時間」や「場所」の制約からの解放というメリットは特に強調されることが示唆された。
二次調査に向けて
ICTの定義や分類が調査対象者へしっかりと理解されたか不安がある。現段階においてはICTイコール遠隔会議システムという意味合いになっている可能性が高いのではないかと考える。ICT活用がコロナ禍での代替ではなく、そのメリットがデメリットよりも優位であった場合、実践や相談援助実習の方法として新たな枠組みを提供するものであると考えることから、このことをより鮮明に表出するために、ICTのツールや活用場面、想定されるメリットとデメリット等について、細分化しながら示す必要性があると考える。
上記の点を含めて、A県とB県の数名の実習指導者に対しインタビュー調査を実施して行く事とする。