本研究では,英語初級レベルの大学生を対象に4コマ程度の絵で表現されたストーリーテリング活動を取り入れたスピーキング指導を9か月に亘り実施し,学習前,前期終了時,後期終了時の3時点での発話を比較した。絵で表現されたストーリーを語るテスト1と自分の思い出を語るテスト2を用い,CAF(語彙の複雑さ,構造の複雑さ,正確さ,流暢さ)とナラティブらしさ (つなぎ語,形容詞,副詞の数と種類) の10観点で分析した結果,語彙の複雑さと正確さはいずれのテストにおいても有意な改善がみられ,つなぎ語と形容詞の数と種類についてはテスト1においてのみ有意に向上していた。また,語彙の複雑さについては30週間を通して改善が期待できるが,正確さと形容詞の使用については学習開始15週目で改善がみられるもののそれ以降は横ばい傾向,つなぎ語の使用においては学習15週目から30週目にようやく改善がみられるなど,観点によって改善の時期も異なることが示された。スピーキング力の向上と言っても,スピーキングのどの側面を伸ばすのかを明確にしたうえで,タスク,学習期間,指導法などを工夫する必要がある。