本論は,子どもの心に働きかけ共感する力を育てる,身近で大切な問題を考えるきっかけとなるといった文学作品としての絵本の持つ利点に着目し,小学校外国語教育にESDの視点を取り入れるための教材として英語絵本の活用を提案することを目的とする。まず,ESDにおいて重視すべき7つの能力・態度(国立教育政策研究所,2012)に通じる教育的テーマを持つ絵本を各1冊ずつ選定し,選定した絵本が小学生児童に相応しい英語レベルであるかを検討するために,Word Level Checker (Someya, 2006)を用いて語彙数と語彙レベルを調べた。その結果,読み聞かせの際に英語の調整が必要なものが含まれているが,概ね指導可能な範囲であることが確認できた。その上で,各絵本の活用例と関連する学習単元例を提案する。複雑化する現代社会における英語教育には,表層的な英語力の獲得のみならず,グローバル・シティズンシップや「生きる力」の育成にも資することが求められ,言語学習教材としてだけでなく社会性や情緒性を育むための教材としても英語絵本を活用する可能性は広がるものと考えられる。