本稿の目的は、合計特殊出生率について解説したうえで、合計特殊出生率の推移を示すことであらためて少子化が深刻であることを示すことである。
現在用いられている合計特殊出生率は、「一人の女性が一生の間に生む子どもの数」であるコーホート合計特殊出生率ではなく、「15~49歳の女性の出生率を合計したもの」である期間合計特殊出生率である。この機関合計特殊出生率は「仮想的に生み出された一人の女性が仮想的な一生の間に生む子どもの数」と表現することができる。また、出生数の低下と合計特殊出生率は連動していることなどから、少子化の深刻さは合計特殊出生率が低いことから判断することもできる。
合計特殊出生率は1947年には4.54であったが、1975年以降低下が進み、2005年には1.26となった。これを受けて政府は少子化対策を強化した結果、合計特殊出生率は回復したが、2016年以降再び低下し、2023年には過去最低の1.20となった。このことから、政府が実施している少子化対策は一時しのぎでありうまく機能しているとは言えない。実施した少子化対策を検証し、なぜうまく機能しなかったのか総括する必要がある。それを行うことなく打ち出された「次元の異なる少子化対策」で合計特殊出生率が回復するかは疑問である。(担当pp.46-55/総p.88)