本稿の目的は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」における「大学のデジタル化」、とりわけマイナンバーカードの導入の内容を確認し、すでにマイナンバーカードが導入されている大学の事例を示すことである。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では「大学のマイナンバー化」が示されており、宇都宮大学をはじめ、いくつかの国立大学ですでにマイナンバーカードが大学に導入されている。「大学のマイナンバーカード化」による問題点についても考察した。学生IDと自身のマイナンバーカードの紐づけを行うことや既存の学生証では提供されないサービスがあることからマイナンバーカードの取得は実質強制となる恐れがある。他方、マイナンバーカードは完全に学生証と置き換えることはできず、マイナンバーカードを導入しても学生証は必須となる。また、大学在学中に取得した情報が卒業後に流出しまうリスクがある。さらに、マイナンバーカードを導入しない大学は補助金をがカットとなり、大学の存続にもかかわることから国立大学はマイナンバーカードの導入が実質義務となっている。「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、2022年度末までに、マイナンバーカードがほぼ全国民に行き渡ることを目指すことが掲げられている。「大学のマイナンバーカード化」行うことで利便性が向上する一方で、さまざまな問題を引き起こす可能性がある。(担当pp.26-32/総p.88)