本稿の目的は医療費の将来予測に使われている長瀬式の問題点について考察することである。厚生労働省は患者の自己負担が増加すれば医療費の抑制につながる根拠として、「長瀬効果」を挙げている。これは「長瀬式」によって算出された給付率と医療費の関係性であるが、あまり知られていない。一方、厚生労働省の資料等では長瀬効果や長瀬式といった言葉がしばしば見られる。
長瀬式は90年以上の前のデータを使っていること推計している点や不連続データを用いている推計している点などの問題点がある。現在でも厚生労働省は医療費抑制の効果や将来の医療費を予測するために長瀬式を用いている。国民の医療負担に直結する長瀬式を丁寧に検証するとともに、信憑性の低い長瀬式に替わる新たな枠組みを構築することが必要であろう。
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