本稿の目的は、「勤務医労働実態調査2012」によって得られた個票データを統計的手法を用いて分析し、医師の健康を害する要因を明らかにすることである。
そこで本章では、「健康状態」を被説明変数にし、9つの説明変数を用いた4つの推計モデルを考え、回帰分析を行った。
その結果、性別、未婚・既婚、宿直回数、時間外労働、休暇日数については有意な推計値は得られなかった。しかしながら、年齢、労働時間、休憩については、有意にプラスの推計値が得られた。また、ストレスに関しては、有意にマイナスの推計値が得られた。医師の過重労働が問題視されているが、本章における分析でも長時間の労働が医師の健康を害する要因となることが確認された。
以上の結果から導き出される政策的インプリケーションとして、医師の健康状態を改善するためには、時間外労働による労働時間を削減することや休暇を増やすことよりも、毎日の通常業務に伴う労働時間を短縮させることが有効であるといえる。また、毎日の休憩時間をきちんと確保できるような環境を作ることが有効である。さらに、既婚女性のみに対する政策のように、政策の対象を絞るのではなく、医師全体を対象とした政策が求められる。ただし、高齢の医師に対する対策は必要である。
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