本稿の目的は、「2010年度看護職員労働実態調査」によって得られた個票データを統計的手法を用いて分析し、看護師の「離職意識」を高める要因を明らかにすることである。
そこで本稿では、「離職意識」を被説明変数にし、10の説明変数を用いた2つの推計モデルを考え、回帰分析を行った。
その結果、時間外労働、休憩、休暇、ミス・ニアミス、ストレス、やりがい、健康状態については有意にプラスの推計値が得られた。また、年齢、性別、看護の提供度に関しては有意にマイナスの推計値が得られた。また、標準化したデータで推計した結果、やりがい、健康状態、ストレスの3つの説明変数の係数が特に大きくなった。
以上の結果から導き出される政策的インプリケーションとして、看護師の離職意識を改善し、離職を防止するためには、時間外労働を減らすことや休暇や休憩を増やすことも有効であるが、それ以上に看護師の仕事に対するやりがいを見いだせるようにすることが有効である。そのために、研修や勉強会等を充実させ、看護の仕事の重要性を再認識するような機会を定期的に設けることが有効である。また、看護師の健康状態の改善を図ることが離職意識の改善につながる。
pp.37-45