北陸地方を代表する地方都市金沢を抱える石川県において、近代社会から現代社会への転換において生活不安や生活困難に対して生活することの共同性や組織化がどのようなかたちで議論されて進められてきたかを概観した。まずは小野太三郎による小野慈善院の地域社会における役割と限界を検討し、次いで日露戦時戦後の慈善事業の様子と戦時下の地域社会の組織化を検討し、さらに米騒動後の地域委員創設の展開、そして大正期の経済保護事業、アジア・太平洋戦争下の厚生事業の抱える問題を通して地域社会における組織化・制度化の試みについて明らかにした。
pp.29ー50