論文

基本情報

氏名 黒木 薫
氏名(カナ) クロキ カオル
氏名(英語) Kuroki Kaoru
所属 健康科学部 リハビリテーション学科(理学療法学専攻)
職名 講師
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

【学位論文】「学童期における選手が抱える痛みと指導者の威圧的な言動(暴言・暴力)の関連」

単著・共著の別

単著

概要

背景:子どもが身体を動かして遊ぶ機会の減少が問題となるなか,現代社会において少年団やクラブでのスポーツ活動は,子どもの身体活動量を確保し,体力や運動能力の発達を促す一つの手段となっている.一方で,スポーツ活動中の怪我(スポ―ツ傷害)によって,スポーツから離れなければならない状況となることも少なくない.スポーツを実施している子供の約半数がスポ―ツ傷害を経験し,骨端線や軟骨障害などに過負荷が加わってスポ―ツ傷害が慢性化すると,日常生活にまで支障をきたすことが報告されている. 一般に,スポ―ツ傷害の要因として,性差や柔軟性・筋力の低下,四肢のマルアライメントなどの内的要因の他、不適切な道具の使用や活動頻度や強度,練習実施場所を含む練習環境などの外的要因が挙げられている。傷害予防の取り組みとして、内的要因に対しては、ストレッチによる柔軟性の改善、筋力トレーニングによる筋力の改善、動作時のマルアライメントに対しては動作指導が行われている。外的要因に対しては、競技特性に合わせた道具の開発や適切な使用、適切な練習方法、練習環境の改善が実施されている。先行研究では、スポーツ活動における指導も外的要因の1つと挙げられている。スポーツ活動を行う子供の場合、成人と違い、指導者による管理や指導方針・方法の影響を強く受けることが考えられるが、その指導の影響とスポーツ傷害の関係は十分に研究されていない。また、スポーツ活動における暴言や暴力を含む威圧的な指導は世界的にも大きな問題となっており、本邦においても暴言や暴力等による威圧的な指導が報告されている。そこで、今回、指導者による威圧的な言動(暴言・暴力)の実態と、威圧的な指導(暴言・暴力)の経験とスポーツ活動に伴う筋骨格系の痛みの関連を検討した。
方法:宮城県スポーツ少年団に所属する小学1年から中学3年(年齢6–15歳)の選手を対象に自記式アンケートを用い、横断研究として実施した。指導者の威圧的な指導(暴言・暴力)の経験と子供が抱える筋骨格系の痛みの関連は、多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。交絡因子は、性別、body mass index(BMI)、年齢、1週間の活動回数、平日と休日の活動時間、スポーツ競技(団体種目もしくは個人種目)、競技レベル、試合の出場頻度、練習のつらさ、とした。結果:指導者による威圧的な指導や暴言、暴力を経験した子供は、それぞれ27.8%、21.9%、12.7%であった。威圧的な指導の経験と子供の抱える痛みの有症率は有意な正の関連があった。暴言および暴力の経験と痛みの有症率は、いずれも有意な正の関連があった。それぞれについて、暴力・暴言を同時に考慮したとしても、痛みの有症率とは正の関連が認められた。また、男女別に検討すると、男子では暴力と、女子では暴言と痛みの有症率との間に正の関連が認められた。結論:指導者による威圧的な指導言動(暴言や暴力)は、スポーツ活動を行う子供の抱える筋骨格系の痛みの有症率に影響を与える因子となる可能性がある。

発表雑誌等の名称

【投稿中】Plos one

発行又は発表の年月

201903