【目的】スポーツ外傷の要因として心理的側面の影響が報告されている。学童期のスポーツ活動にて指導方法が選手の心理的側面に及ぼす影響は大きいと考えられ、指導者による暴言や暴力は選手の慢性的な痛みに影響を及ぼす可能性がある。
【方法】対象者は平成25年度宮城県スポーツ少年団に登録されている小学1年から中学3年までの選手に実施したアンケート調査に回答した7,333名のうち、欠損データを除いた5,560名。痛みの有無、発生時期を質問紙にて評価し、3週間を超える痛みを慢性的な痛みと定義した。自分もしくは仲間に対する指導者からの暴言および暴力の経験の有無についても評価した。慢性的な痛みの有無を従属変数、指導者からの暴言および暴力の経験の有無をそれぞれ独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】潜在的な交絡因子で調整後、指導者による暴言を経験したことのない選手と比較して、暴言を経験した選手が慢性的な痛みを有するオッズ比(95%信頼区間)は1.31(1.07-1.59)(P=0.008)であった一方で、指導者による暴力との関連性は認められなかった。
【結論】指導者による暴言は選手の慢性的な痛みに影響を与える要因の可能性がある。