災害時における医療機関の危機管理体制のあり方を検討するために、2つの視点から災害発生時に必要となる危機管理項目を抽出し、その抽出項目を用いて災害発生時の危機管理の実態を分析した。2つの視点とは、①病院管理におけるマネジメント方法の視点としてAPDEAマネジメントサイクルの視点、②リスク予防の視点として一次予防~四次予防までを踏まえたリスク予防システムの視点である。抽出された危機管理項目を用いて東日本大震災時の病院の危機管理の実態を分析した結果、一次予防では耐震や免震対策、防災訓練の実施内容が不十分であること、三次予防では他機関との連携体制、四次予防では患者、職員の心のケア体制への計画が十分ではないことが明らかになった。病院の危機管理体制を検討するためにはシステム論的な視点が必要であり、その視点に基づいた危機管理マニュアルが整備されていないという問題点が明らかになった。東日本大震災後の地域社会における医療機関や福祉施設を支える健康福祉システムの見直しが必要であり、システム論的な視点で災害時の危機管理体制を作ることが求められる。
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二瓶洋子、柿沼倫弘、関田康慶