本研究の目的はCOVID-19流行禍における看護師の離職意向と、ソーシャルキャピタルおよび仕事に対する負担感との関連を明らかにすることである。2022年7月に、宮城県にある全138病院に勤務する看護師を対象に、QRコード入りの調査依頼状を郵送した。全施設から均等にサンプルを得るため、各病院の病床数の2割にあたる枚数の調査依頼状を郵送し、合計5,190部であった。調査項目は、基本属性、2つの離職意向尺度、職場のソーシャルキャピタル尺度、仕事に対して感じる負担感であった。回答に不備のない1,505名のデータを分析対象とした。対象者の平均年齢は39.2±11.8(mean±SD)、女性が1,412名(93.8%)であった。重回帰分析の結果、組織からの離職意向と有意な関係を認めたのは、年齢(β=-0.108,p<.001)、ソーシャルキャピタル(β=-0.363,p<.001)、仕事に対して感じる負担感(β=0.336,p<.001)であった。また、COVID-19の拡大の影響による離職意向に関して有意な関係が見られたのは、年齢(β=-0.127,p<.001)、男性(β=-0.068,p<.001)、子どもあり(β=-0.081,p<.001)、ソーシャルキャピタル(β=-0.099,p<.001)、仕事に対して感じる負担感(β=0.445,p<.001)であった。いずれの分析においても多重共線性は認めなかった。組織からの離職意向、COVID-19の拡大の影響による離職意向では関係している要因に違いがあった。組織からの離職意向にはソーシャルキャピタルが強く関係し、COVID-19の拡大の影響による離職意向は、COVID-19流行に関連した仕事に対する負担感がより強く関係していた。COVID-19流行禍ではソーシャルキャピタルが高いと感じていても、COVID-19の影響による負担が増加することで離職を引き起こす可能性が示唆された。