本研究の目的はCOVID-19罹患による苦しい体験の記憶に影響を及ぼす要因について明らかにすることである。2022年8月にCOVID-19罹患体験を有する20歳以上の者を対象にweb調査を実施した。マーケティングリサーチ調査会社に登録している295万人の中から無作為に抽出された960人が回答した。調査内容は基本属性、COVID-19罹患による苦しい体験の記憶に関する独自に作成した質問項目(6項目)、療養状況に関する質問項目(6項目)だった。分析方法は、COVID-19罹患による苦しい体験の記憶を従属変数、基本属性および療養状況に関する質問項目(6項目)を独立変数として重回帰分析を行った。結果:回答に不備のない956人のデータを分析対象とし、平均年齢は 45.5±13.2 歳(mean ± SD)、 男性が 540人(56.4%)であった。 重症化リスク無しと回答した者は 757 人(79.1%)であり、後遺症無しと回答した者は614人(64.2%)、後遺症が有ったが完治したと回答した者は189人(19.8%)、現在も後遺症有りと回答した者は153人(16.0%)であった。COVID-19陽性確認後、速やかに保健所や診療所等による健康観察を受けられた者は477名(49.9%)であった。COVID-19罹患による苦しい 体験の記憶に有意に関連していたのは、年齢(β=−.155、p<.001)、男性(β=−.099、p=.005)、重症化リスク(有)(β=.142、p=.001)、療養場所は希望通りでない (β=.150、p=.002)、後遺症が有り現在も症状有り(β=.240、p<.001)、保健所や診療所等による健康観察を速やかに受けられた (β=−.084、p=.023)の6項目であった。療養場所が希望通りでなかった者、保健所や診療所等による健康観察を受けなかった者、すなわち行政サービスの提供が追い付いていなかった療養者は、COVID-19罹患体験が苦しい体験であったと記憶していることが示された。また、重症化リスクを有している者、後遺症が有り現在も続いている者、すなわちCOVID-19罹患による身体への影響を受けている療養者は、COVID-19罹患体験が苦しい体験であったと記憶している傾向があることが示された。
共著:木野内彩音、高田望、杉山祥子、原ゆかり、山田薫子、磯谷明音、二瓶洋子、伊藤佳美、関下慎一、朝倉京子