本稿は、東北福祉大学創立150周年記念特別展において公開された芹沢銈介作「道元禅師観月像」を対象に、その図像的典拠と表現意図を検討し、近代における祖師像受容の一様相を明らかにすることを目的とする。まず、曹洞宗の宗門校として成立した東北福祉大学の歴史的背景と建学の精神・教育理念を整理し、宗教的基盤の中で祖師像が持つ意味を確認した。ついで作品分析を通じ、本図が宝慶寺(福井県大野市)伝来の「道元禅師頂相」を踏襲しながら、簡潔な筆致と淡彩によって像主の内面的精神性を強調する再構成であることを指摘した。また「観月」という主題が道元の思想における悟りの象徴としての「月」の観念と深く関わる点を考察し、視線表現に禅的観照の思想が反映されていることを論じた。さらに制作時期の検討から、本作を芹沢晩年の宗教主題への探究を示す重要作と位置づけ、中世頂相の図像伝統が近代工芸作家によって再解釈された意義を明らかにした。