2020年に実施した仏像調査では、宮城県気仙沼市の興福寺(曹洞宗)に近世の仏像10件(41体)が確認された。その中には、江戸時代前期に遡ると見られる本尊の釈迦如来坐像と十六羅漢像もあり、火災の焼失等で草創期の記録に乏しい寺の歴史を語る上で重要な示唆を与えてくれる。また、七世普應皆潤が再興造営に当たった18世紀後半には、堂宇の整備と合わせて仏像や塔の造立が相次いで行われていることが分かった。そして、新たに銘文の発見された寛政2年(1790)銘の閻魔十王および眷属像と、天明8年(1788)銘の韋駄天・毘沙門天・大黒天の三尊像に関しては、閻魔十王像および眷属像が天明飢饉を契機とする追善供養のための造像・奉納であった可能性を指摘した。
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