論文

基本情報

氏名 門脇 佳代子
氏名(カナ) カドワキ カヨコ
氏名(英語) Kadowaki Kayoko
所属 教育学部 教育学科(中等教育専攻)
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

題名

「東北福祉大学坐禅堂および本尊「聖僧文殊像」をめぐって」(査読付き)

単著・共著の別

単著

概要

東北福祉大学の坐禅堂は、昭和53年竣工の木造建築で、禅宗建築研究の第一人者である横山秀哉氏により古式の僧堂に範を求めて設計された。堂内中央には、建立と同時に彫刻家・難波孫次郎によって新造された本尊「聖僧文殊像」が安置されている。ところで、坐禅堂に聖僧文殊像を安置することは、本来、坐禅修業の場である僧堂が行鉢を含む生活全般の場であり、古くは「食堂即僧堂」であったことに拠る。その淵源を辿ると、斎会の場において聖僧に供膳供養するというインド以来の伝統があり、やがて唐の不空によって天下諸寺の食堂に聖僧の代表である賓頭盧尊者に加えて文殊菩薩が祀られるようになった。不空の主張は、従前の賓頭盧上座に対して、さらにその上に文殊菩薩を置くもので、日本では最澄が大乗戒壇設立の必要性を説く『顕戒論』に不空の論を根拠とする食堂の「文殊上座」が明示されている。また同時に、最澄の主張は、賓頭盧尊者と呼称してきた像を文殊菩薩に置き換えるもので、ここに僧形文殊の成立を見ることができる。文殊菩薩は、『梵網経』に説く大乗菩薩戒の受戒において羯磨阿闍梨として作法を司ることに加え、『文殊師利般涅槃経』には文殊の名を聞きその形像を見るだけで悪道に堕ちないという罪障消滅の功徳を有する。布薩において衆僧の懺悔による滅罪を助ける役目は、奈良時代以前に遡る聖僧供養の機能に合致するものであり、僧堂の本来の機能を示唆していよう。
pp.27-46

発表雑誌等の名称

『東北福祉大学仏教文化研究所紀要』第1号

発行又は発表の年月

201912