「春日若宮信仰に対する一考察-春日曼荼羅の本地仏表現を通して-」(査読付き)
今日一般に説かれる春日若宮の本地仏は文殊であるが、現存する早い時期の春日曼荼羅には聖観音ないし十一面観音を本地仏とする作例が認められる。文殊説の本格的な展開を促したと見られる貞慶の著述類には、春日若宮の本地仏としての文殊について「形同五髻童子」と説くことから、文殊説の一般化には童子形五髻文殊流布の影響が考えられる。本地仏に見る尊格の変更は、13世紀以降の春日若宮信仰が中世の童形信仰を積極的に取り込んだことを示すものであることを考察した。pp.28-56
『女子美術大学芸術学科紀要』6号