「春日信仰における童形神の成立と展開」(査読付き)
春日若宮の神影図は美豆良を結う童形であり、若宮信仰の隆盛に伴いその姿が広く受容された。しかし、14世紀初頭に成立した「春日権現験記絵」では、若宮以外の諸神にも童形表現が認められ、童形神信仰の拡大が窺われる。同作に登場する童形神の多くは現実の子供の姿と近似することから、興福寺等の稚児の存在が図像の成立に関与した可能性が指摘される。春日信仰における童形神の展開は、子供を聖なるものと見る中世的嗜好を背景として、現実の稚児達を反映した多彩な童形神を生み出していったといえる。pp.102-111
『女子美術大学研究紀要』35号