地域包括ケアシステムの構築が求められているなか,地域で看取りを迎える人が増加する。一方で,厚生労働省の「人生の最後の段階における医療に関する意識調査(令和4年)」で「どこで最期を迎えたいかを考える際に、重要だと思うこと」の問いに対して、最も多い回答は、「家族等に負担にならないこと」であった。そこで、介護経験者は、自分が介護を受ける際に、どのように考えているのかを明らかにするため、介護経験者10名にインタビュー調査をおこなった。分析の結果、カテゴリには、4カテゴリ抽出され《次世代に対しての教育》《教育やしつけなどの教え》《時代背景の影響》《迷惑を掛けざるをえない》が挙げられた。サブカテゴリは9つ抽出され<次世代に伝えること><子供の務め><教育の背景><核家族化の影響><子供の生活・人生への影響を考える><お互い様のきもちがない><介護経験から迷惑をかけたくない><家族の状況により選択は変わる>が挙げられた。介護経験があるがゆえに、「親を看た段階だけで」「家族に迷惑はかけられない」「介護は簡単ではない」と思い、家族が介護するということ、介護をするのに、迷惑をかけないでおきたいということを現実に帯びているものと考えられる。さらに、迷惑を変えたくないという背景には、小さいころから受けてきた「迷惑を掛けてはいけない」という教育や、お天道様が見ているという「しつけ」があり、日本の文化が根底に、影響しているといえる。 「迷惑をかけたくない」からこそ、先を見越し準備をしている人々も多くみられたが、そのほかの分析の内容から、「地域性」があり、近所の見守りや介護事業所を中心とした、地域でのネットワークが強く、柔軟に対応してくれることを住民は目にしており、「この地域であれば安心して、一人でも最期まで暮らせる」という思いが、選択肢を広げている要因にもなっていると考えられた。