本研究の目的は,自力歩行が可能で在宅生活しているパーキンソン病患者14名(男性6名,女性8名,平均年齢71.3±6.1歳)を対象に,通常・最速・低速での歩行速度を測定し,各種バランステストおよび骨格筋量との関連から,パーキンソン病患者の歩行能力評価に適した歩行速度計測の方法について検証することである。相関分析の結果,通常歩行速度と有意な相関を示したのはTimed up & go test(TUG)のみであり,最速歩行速度のそれは身長,TUG,Functional reach test(FRT)の3項目であった。一方,低速歩行速度と有意な相関を示したのは骨格筋量,上肢・下肢・体幹筋量の4項目であった。さらに,最速歩行と低速歩行の速度差と有意な相関を示したのは身長,骨格筋量,上肢・下肢・体幹筋量,TUG,FRT の7項目に及んだ。これらの知見から,パーキンソン病患者の歩行能力評価は通常歩行で速度計測するよりも,最速歩行に加えて低速歩行でも評価する重要性が示された。
9(4)181-186
村田 伸, 兒玉 隆之, 中野 英樹, 相馬 正之, 佐藤 洋介, 弓岡 まみ, 村田 潤, 中江 秀幸