本研究は,若年者と高齢者を対象に安静立位,および認知課題有無の2条件におけるCross testの重心動揺を比較・検討した。若年群(19名)と高齢群(16名)の測定値を比較した結果,安静立位の総軌跡長が若年群に比べて高齢群の方が有意に大きかった。Cross testでは,群と認知課題の有無を要因とした二元配置分散分析の結果,足長に対する前後方向の重心移動能である%FBと足幅に対する左右方向への重心移動能である%LRがともに群間に有意な主効果を認めた。%FBは群間と認知課題条件間で交互作用が有意であり,下位検定の結果,高齢群のみ,認知課題無しに比べて認知課題有りの%FBが有意に低値であった。本研究結果から,若年者に比べて高齢者の安静立位は不安定性であり,随意的重心移動能力も低いことが示唆された。また,認知課題を付加したCross testの結果から,若年者に比べて高齢者は前後の随意的重心移動能力に認知課題負荷の影響を受けやすいことが示唆された。
7(1)35-39, 2017
中江秀幸・村田 伸・甲斐義浩・相馬正之・佐藤洋介・大田尾 浩・村田 潤