パーキンソン病(PD)は進行性神経変性疾患であり,加齢とともに有病率が増加傾向となる。運動症状以外にも嗅覚および味覚の低下,うつ状態や認知症,そして晩期に生じる嚥下障害による低体重・低栄養状態もみられ,日常生活活動制限や参加制約の一因となっている。PD患者の在宅療養期間は長期化するため,日々の食事摂取,身体機能維持を目的とした,あるいは介護支援を目的とした介護保険サービス利用や外出などの活動も重要となる。しかし,居住地域の事業所数や交通の利便性,気温や積雪など地域性も影響すると考えられる。そこで本研究では,食事栄養状態,介護保険サービスの利用状況,外出活動について2地域の在宅PD患者にアンケート調査を行った。2地域の特性は,人口は青森県が約125万人で宮城県が約233万人,高齢化率では青森県が33.3%で宮城県が28.3%であり,居宅サービスの事業所数は青森県が5,412件で宮城県が5,452件である。平均気温は青森県10.4℃で宮城県が13.6℃,降雪量は青森県が669cmで宮城県が32cm,降雪日数では青森県108日で宮城県64日であり,寒さや積雪といった差異がある地域である。結果は,BMIで18.5未満の痩せPD患者が21.7%存在し,発症後の体重減少がみられること,栄養状態の自己評価が低い症例に多いことが示唆された。介護保険サービス利用状況では未利用率が両地域ともに約35%存在していた。人口や積雪も含めた気候に差がある2地域であったが,居宅サービス事業所数が同程度であり,通所サービス利用や通院も外出として調査したこともあり,介護保険サービス1週間あたりの利用頻度,外出の有無については差を認めなかった。しかし,公共交通や徒歩圏内域といった利便性が影響する趣味活動といった3次活動では宮城県が有意に多かった。
青森県と宮城県と比較したものであるが,県内においても気候や利便性に差があることから,市町村単位での調査が必要であり,通院や通所サービスの利用頻度と利用時間,外出の際の交通費用といった点では地域差がある可能性があり,調査すべき課題と考えられる。