【はじめに,目的】パーキンソン病(PD)患者の増加と在宅療養割合の高さから,介護保険サービスの重要性が高まっている。また近年は,非運動症状によるQOL低下が注目されている。そこで今回,在宅PD患者の運動療法の実施状況とQOLに関するアンケート調査を行った。
【方法】PD友の会A県支部170名を対象にHoehn&Yahr重症度(Yahr),医療機関と介護保険サービス,自主練習における運動療法の状況,Parkinson's disease questionnaire-39(PDQ-39)について郵送法にて無記名式アンケート調査を行った。PDQ-39の総得点を100点換算したサマリー指数(低値ほどQOLが高い)を指標とした。得られたアンケート結果は,単純およびクロス集計,要介護認定有無と自主練習有無の比較をt検定,YahrとPDQ-39間を一元分散分析で検討した。統計処理はIBM社SPSS ver.23を用い,統計学的有意水準を5%とした。
【結果】有効回答数87通,回収率51.2%,Yahr Ⅰ:6名,Ⅱ:17名,Ⅲ:41名,Ⅳ:18名,Ⅴ:5名であった。医療機関の運動療法経験は50.6%,現在も継続中は8.0%であった。要介護認定率72.4%,介護保険サービス利用率が66.7%であり,サービス内訳(重複あり)は通所リハ36.8%,通所介護24.1%,訪問リハ11.5%の順であった。介護保険サービス利用時の満足は,「質問や相談ができる」28.7%,「指導が得られる」21.8%,「筋力の向上」20.7%であった。一方,要望や不満は,「いつも同じ内容」19.5%,「頻度が少ない」16.1%,「時間が短い」14.9%であった。自主練習の実施率は78.2%で,実施内容は柔軟体操40.2%,散歩35.6%,脚の筋力強化34.5%が上位であった。YahrとPDQ-39の一元配置分散分析では有意差(F=10.72,p<0.01)を認め,事後検定でYahrⅠ~ⅢそれぞれがⅣとⅤと有意差を認め,ⅣとⅤのQOLが低かった。PDQ-39は介護保険サービス利用の有無(有:45.6±30.8点,無:30.8±19.7点,t=-3.30,p<0.01),自主練習の有無(有:38.3±20.0点,無:49.0±22.2点,t=2.02,p<0.05)間に統計学的な有意差を認めた。
【結論】医療機関における運動療法継続率が8.0%に対して,介護保険サービス利用率が66.7%であり,サービス利用有が無よりもPDQ-39も有意に高く,在宅PD患者の運動療法の場として重要性が再認識された。利用時の満足点から,指導や相談など直接的な関わりが上位に挙げられており,個別療法のneedsが高いことが示唆された。PDQ-39の結果から,Yahr ⅣとⅤではⅠ~Ⅲに比べてQOLが低く,要介護認定率も高いことから介護保険サービス事業所におけるQOLへのアプローチの重要性が示唆された。また,自主練習習慣が無に比べて有のQOLが高い結果から,自主練習の習慣化がQOL低下を防ぐ可能性が考えられた。
2017.5.12 幕張メッセ ポスターセッションP-NV-04
中江秀幸・相馬正之・坂上尚穂