その他

基本情報

氏名 中江 秀幸
氏名(カナ) ナカエ ヒデユキ
氏名(英語) Nakae Hideyuki
所属 健康科学部 リハビリテーション学科(理学療法学専攻)
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

タイトル・テーマ

後期高齢者の歩行能力と身体活動能力の性差について

単著・共著の別

その他(発表学会等)

発行又は発表の年月

201211

発表学会等の名称

第30回東北理学療法学術大会 青森市文化会館

概要

【目的】歩行を始めとする活動や運動は身体機能低下を予防する重要な手段として介入が行われているが、75歳以上の後期高齢者では機能低下や要介護状態に陥りやすい。身体活動には運動や余暇活動だけではなく家庭での役割も含まれることから男女で異なり、変化にも性差があると言われている。そこで今回、歩行能力や身体活動能力の状況、変数間の関連性について性差で比較し、その特性について検討した。
【方法】対象はS市内2か所の通所サービス施設を利用している虚弱もしくは軽度要介護高齢者とした。測定に支障ある疾患を有さず3分以上の歩行が可能で、本研究への参加の同意が得られ、重度の認知症が認めないという条件を満たした男性12名、女性12名の合計24名を対象者とした。年齢と体重はそれぞれ83.7±5.6歳、52.2±10.0kgであり、要介護認定区分は要支援が11名、要介護1が10名、要介護2が3名であった。
歩行能力の指標は10m最大歩行速度(10m最大;m/min)、Timed Up and Go Test(TUG;秒)、Physiological Cost Index(以下、PCI;beats/m)を求めた。身体活動能力の指標に機能的自立度評価(FIM;点)、老研式活動能力指標(老研式;点)を用いた。統計処理は基本統計量、t-test、Pearson積率相関係数を求め、統計学的有意水準を5%とした。本研究はヘルシンキ宣言を尊重するように企画し、研究内容および公表の有無について書面にて同意を得てから進めた。
【結果】測定結果は(男性/女性)、10m最大;56.2±20.6/62.9±11.2m/min、TUG;17.7±5.4/15.9±1.8m/min、PCI;0.54±0.43/0.32±0.18beats/m、FIM;115.9±9.0/117.3±7.2点、老研式;6.8±2.7/4.9±3.1点であり、歩行能力およびADL能力は女性が高く、老研式では男性で高値であった。なお、全ての変数で男女間の有意差(non paired t-test) は認めなかった。
 歩行能力と身体活動能力の変数間の関連性では、10最大では女性のFIM(r=0.73)のみ、TUGでは男性のFIM(r=-0.64)と、女性のIPAQ(r=-0.63)と、男女とも老研式(r=-0.59、r=-0.61)と、PIC値では男性のFIM(r=-0.64)において有意な相関を認めた。
【考察】最大歩行速度は身長や体重と相関し、体格差などから男性の方が高いと言われているが、本研究の対象者とした後期高齢者では有意な男女差は認められず、身体活動能力においても明らかな性差は認められなかった。
 歩行能力と身体活動能力の変数との関連性では、男女ともに有意な相関を認めたのがTUGと老研式の変数間であり、TUGは後期高齢者における性差に影響されない高次の生活能力を反映する指標であることが示唆された。女性では10m最大とFIMが、男性ではPCIならびにTUGがFIMと有意な相関を認めた。FIMと歩行能力変数との関連性はみられたが、性別によって異なっている。これは対象者の歩行速度の分布も影響していると考えられ、性差の影響については症例数を増やして検討する必要がある。