【目的】発達障害のあるこどもの保護者支援に役立てるため、母親が発達障害のあるこどもの子育てにおいて困っていることの実態を明らかにする。
【方法】対象は発達障害のあるこどもの母親91名であり、インタビューガイドを用いた半構造化面接調査を行った。質問項目は、「発達障害のあるこどもの子育てにおいて困っていることについて」、自由に語ってもらった内容をデータとして逐語録に起こした。そのデータを質的帰納的方法で、発達障害の特性そのものと、二次的な問題なのかを分析し、さらに、内容を単純集計した。
【結果】母親が子育てにおいて困っていることは計257あり、うち、<発達障害の特性>と考えられることは106(41.2%)、<二次的な問題>と考えられることは120(46.7%)、<二次障害>と考えられることは31(12.1%)であった。
【考察】母親は子育てにおいて困っていることとして、発達障害の特性も、二次的な問題も同じようにとらえ、発達障害に関する知識不足のため、区別できていない場合、自分だけで解決しなければと思い、こどもにより厳しく対応し、こどもの状態や親子関係などがさらに悪化する危険があると考えらえる。発達障害のあるこどもの二次的な問題を防ぐためには、母親に発達障害に関して正しい理解を深めてもらえるような教育的ケアが必要と考えらえた。また、二次的な問題として、学校関連で困っていることは21.4%であり、発達障害のこどもの特性は不登校やいじめなどの問題に結びつきやすいと考えられた。このことより、学校関係者は、不登校やいじめがあった場合、発達障害が背景にある可能性を検討することが必要であることが示唆された。さらに、二次障害まで至った場合は、特に注意して両親を支援していく必要があり、学校関係者も含め周囲が正しく対応することと、反抗挑戦性障害や身体的および精神的な症状が出現している場合は、医療機関の積極的な介入が必要と考えられた。このことより、両親と学校関係者に対して、二次障害に関しての正しい理解を深めるため、看護として教育的ケアをしていき、発達障害のあるこどもの二次障害を予防するために、両親だけに子育てをまかせるのではなく、学校と医療機関が連携し、治療的介入を始めることが重要であると考えられた。
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