研究目的は、東日本大震災から5年経過した仮設住宅から恒久住宅への転居の時期に生じる問題と働きかけについて明らかにすることであり、仮設住宅の集会所において、支援者として住民に関わっている方を対象として、面接調査を行い、質的帰納的方法で分析した。
支援者がとらえる仮設住宅から恒久住宅への転居の時期に生じる問題として、《仮設住宅からの転居による、犯罪と孤独死の不安》、《人が集える建物を失うことによる、居場所の喪失》、《恒久住宅転居に伴うつながりの喪失から生じる健康問題への危機感》、《恒久住宅転居により直面する自力再建の経済的負担と家庭内での立場の逆転》、《転居をきっかけとした、これまでのつながりが突然切れる感覚と寂しさ》の5つのカテゴリーが抽出された。支援者がとらえる仮設住宅から恒久住宅への転居の時期に生じる問題は、集いの場を失うことが大きく関わっていると考えられた。
また、転居の時期に生じる問題に対する支援者による働きかけとして、《警察による支援も受けながら、犯罪と孤独死を防ぐ活動を検討する》、《恒久住宅地域の集会所建設について自治体に要請する》、《恒久住宅転居後の支援を自治体に要請する》、《転居をきっかけとした支援を受けることからの回復と、地域資源への移行を支える》、《恒久住宅地域での新たなつながりを構築する》の5つのカテゴリーが抽出された。支援者がとらえる問題として、つながりが突然切れる感覚と寂しさがみられた。仮設住宅で5年の歳月をともに過ごしていても、被災状況、経済状況、生活背景などがそれぞれに異なることから、移転時期や移転場所について、互いに伝えることも聞くこともできずに転居していく実態が明らかになった。また、自力再建であっても経済的負担や家庭内での立場の逆転といった問題に直面していることから、恒久住宅地域でも住民の居場所とつながりのあるまちづくりを支援することが必要であることが示唆された。
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一ノ瀬まきの、富澤弥生、鈴木千明、中村令子、三澤寿美