本研究では,地域づくりのキーパーソンとなっている住民が,保健師教育課程にお ける地域アセスメントおよび健康教育の企画立案演習を通じ,大学生と関わりを持つとい う体験をどのような機会と捉えているのかを明らかにすることを目的とした。 研究参加者は,演習フィールドである B 地域における地域づくりのキーパーソン 4 名 であった。半構成的インタビューを行い,逐語録を作成し,コード化,サブカテゴリ化, カテゴリ化を行った。 分析の結果,地域づくりのキーパーソンが,演習を通じて大学生と関わりを持つという 体験をどのような機会と捉えているのかについて,61 のコードが抽出され,10 のサブカ テゴリ,3 のカテゴリに集約された。地域づくりのキーパーソンは,【他者のまちの見立 てや提案からまちづくりへの動機が高まる】【若い世代のまちを理解する過程を通じた成 長のサポートがしたい】【若い世代から力をもらう】機会として捉えていたことが明らか になった。 これらの知見を踏まえ,本演習が B 地域の地域づくりのみならず,B 地域の住民,中 でも老年期にある人々にとっては,前向き・能動的な気持ちや姿勢を引き出す契機になり うる可能性を示すとともに,それが実現するための課題として,本演習が含まれている科 目と他の教育活動の機会を連動させながら,大学生と住民の関わりの質を高めることの重 要性を示唆した。