本研究は、歌唱指導において音程獲得に不安な学生がどのように音程や声量、表現力を段階的に習得していくかを明らかにすることを目的とする。対象は大学生2名(女子学生・男子学生1名ずつ)とし、10回にわたる歌唱活動の経過を個別に記録・分析した。分析の結果、音源や音域への慣れ、旋律構造の理解、身体的発声の工夫、励ましといった要因が、それぞれの習得プロセスに大きな影響を与えていた。実際、与える音源の工夫および音高認知を行うためのスモールステップにより、音程の獲得が適切に行われ、音程の安定を起点に、声量や表現意欲が段階的に高まっていく傾向が共通して見られた。さらに、個別のつまずきに対して適切な補助を行い、肯定的なフィードバックを積み重ねることで、学習者の内的動機づけと技能の向上に寄与することが明らかになった。以上より、今後の歌唱指導においては、個に応じた柔軟かつ継続的な支援の重要性が示され、指導法の多様化と体系化の必要性が示唆された。
渡会 純一・千葉 昌哉・佐藤 和貴・佐藤 克美