歌唱練習は、 模範の音声の模倣をすることで行われてきた。 学習者にとっては、聞こえてくる模範の音声の違いや学習者自身の音楽経験の習熟度により、音高認知の習得に差が出てくるものと考えられる。 よって、 音高認知が苦手な学習者にとって、 発声練習による音高の習得はどのようなものかを検証する必要がある。 そこで、 音高認知が苦手な被験者を募集し、エントリーをした学生を対象にピッチマッチと発声練習を複数回実施し、その変容を観察した。結果として、 ①協和音程の認識が難しく、歌唱もしづらいこと、②低音域中心に被験者が歌唱した近隣の音高の歌唱が難しいこと、③ピッチマッチで感覚を学習し、 発声練習でミスが減る音域があること、 ④喚声点の幅を狭めることができること、⑤媒体 (声や楽器)による相性があること、以上 5 点が明らかになった。結論としては、歌唱導入時にウォーミングアップを丁寧に行うこと、苦手な音程・音高・媒体を指導者が把握すること、 指導者の歌声に意識を向けるように指導すること、以上 3 点を示した。
総p.160,pp.141-159
渡会 純一・千葉 昌哉・佐藤 克美・佐藤 和貴