教員養成の現場において、歌唱練習は、学習者が模範となる教師の音声を模倣することによって行われてきた。しかしながら、音高を合わせて歌うことが苦手な学生が一定数いる。その背景には、学校でしか音楽経験がないという学習経験の少なさと、聴きなれない他者の声から音高を認知することが難しいことが挙げられる。歌唱が苦手な学習者にとって、模範の音声の違いが歌唱練習にどのように影響を与えるか検証する必要がある。そこで、被験者を募集し、エントリーをした学生を対象にピッチマッチと発声練習の方法を複数回実施した。具体的には、複数の男声、女声、システムを使用した自分の声、ピアノ、キーボードのchoirの音色などで試し、模範の音声の種類によって、歌唱練習が効果的に行うことができるか確認した。結果、被験者と同性の女声、および自分の声が一番望ましいという結果になった。結論としては、性差がある状況での音取りは難しいため同声同士での歌唱練習をするのが望ましい、ピッチマッチと発声練習で認識の方法が異なっていること、声帯筋の緊張状態を開放する必要があることが明らかとなった。
総p.176,pp.89-108
渡会純一・佐藤和貴・千葉昌哉・佐藤克美