本研究では,研究協力を得た学生4名(男声女声各2名)に対し,本音響シ ステムを利用した「自分の声質を模範とする練習」方法と,教師の声を利用した「他者の 声を模範とする練習」方法の2つの練習を行った。これらの指導の過程,上達の度合いを 音楽教師がそれぞれ記録した。この記録をもとに自分の声質を模範とする練習と教師の声 を模範とする方法を比較し,本音響システム使用した練習が効果的であるのか検討した。 その結果,教師の声を模倣する練習では性差や声質の違いにより発声時に戸惑う様子がみ られ,模範の音声に対する発声のやりにくさが見られた。しかし自分の声質を模範とする 練習では,声種や声域に関係なく模範の音高をスムーズに聴き取ることができ,発声を戸 惑う様子は練習とともに見られなくなった。本音響システムを利用し,自分の声質で比較 すれば,音高の聴き取りに対するハードルが下がることで苦手意識を生まず,学習効果が 高まると考えられた。
佐藤和貴・渡会純一・佐藤克美