政治的イデオロギーの違いは、人々の意見が不一致となり、対立することの主な原因のひとつである。今日、政治的イデオロギーによる社会の分断が加速しており、その対応が急務であることが指摘されている。この問題に取り組むためには、リベラルあるいは保守という政治的イデオロギーに傾倒する人々の心理的特徴と、その個人差が生じるメカニズムの解明が不可欠である。これまで、人々の政治的イデオロギーは、家族やコミュニティの態度や信念、メディア接触などの影響を受けていることが示されてきたが、過去25年の間に、心理学、政治学、神経科学を結び付けた学際的研究が展開され、政治的イデオロギーの個人差に神経生物学的メカニズムが媒介していることが明らかになっている。本稿では、政治的イデオロギーの個人差に関する心理学理論と神経政治学、政治神経科学の研究を概観した。