東日本大震災では，一般市民を含めさまざまな生活問題を抱えた市民が被災し，その復旧・復興する過程において，これまでの高齢者を中心とした地域包括ケアシステムの構想や構築の限界が顕在化している．そのため，震災後の地域包括ケアシステム再構築においては，高齢者だけではなく，広く一般市民の福祉課題に対応できるよう，柔軟なシステムが求められている．本研究では，特に災害福祉リスクが高いとされている精神障がい者のシステムに焦点を充てることとした．その理由として，精神障がい特有の性質に，「障がいが目に見えにくいこと」「障がいが変化しやすいこと」がある．これらの性質は，障がいの理解が十分にすすんでいないことや支援制度の立ち後れに影響する要因としてあげられている．先の東日本大震災においても，「精神病院があることは知っていたが，地域の人に聞いても場所がわからなかった．そのため，必要な物資が行き渡るまで，他の診療科よりも時間がかかった」との報告がある．
以上のことから，本研究では，精神障がい当事者が震災時どのように過ごし，どのような問題に直面したのかを明らかにし，精神障がい者を支える地域包括システムに必要な要素を検証した．
pp275-284
