本研究では、Onkenらが、リカバリを主要な内容とする文献研究から得たリカバリに関する要素を参考に、当事者講演活動が精神障害当事者のリカバリ過程へ与える影響について、講演活動を行っている精神障害当事者へのインタビューから分析し、検証を行った。
講演活動は、(1)自己の客観視をしていく変化、(2)自らの捉え方や新たな自分への気づき、(3)自己を肯定する過程、(4)社会のなかの役割に気づくことの4点に影響することが明らかになった。また、変化を促す要因として体験を可視化すること、他者に自分の体験が受け入れられること、聴講者の存在、体験を講演する場、講演仲間の存在があること、講演活動の目的が明確であることが抽出された。Onkenらが得たリカバリ要素のうち強く影響するものとしては、成長、気づきと可能性、希望、自己主体感、意味と目的、社会的な機能と役割、社会とのつながりの7要素であることが検証された。
pp.103-115