現在,精神障がいや精神疾患の正しい知識・態度の普及啓発,そしてスティグマの解消に向けてさまざまな活動が行われています.この活動では,専門家による正しい知識の普及だけではなく,当事者との接触体験が効果的な方法と考えられています。仙台市が取り組むスピーカーズビューロー活動(以下SB)では,単なる接触体験を超えて,聴講者の生活の場に出向く,ディスカッションを行う,依頼内容に応じてプログラムを作成するなど,アウトリーチ,双方向,相互理解をキーワードとしてすすめてまいりました.
これまでの活動から,経験者による講演は社会的スティグマ(social or public stigma)の是正だけではなく,セルフスティグマ(self-stigma)の改善にも有用であると分かりました.その効果を明らかにするために,2013年にSB講演者を対象として「日本版リカバリーアセスメントスケール」を用いたアンケート調査が行われました.その結果,SB活動前後を比較すると,RASの得点が全項目で上昇しており,また,「自分の将来に希望を持っている」の項目では,変化が顕著に表れていました.
今シンポジウムでは,SB活動を通して明らかになった聴講者の変化,講演者の変化,変化を誘発する要因及び,リカバリーに向けた取り組みの現状と課題について報告しました.