3.11では災害ボランティアが従来の公的役割と言われる領域を補完して余りある働きをした。災害ボランティアという災害対応主体をなくして、災害からの復旧・復興は成しえないという程、災害復旧・復興の社会資源として定着した感がある。さらに、3.11以後の被災地での継続的な聞き取り調査からは、災害ボランティアが地域再生においても多くの役割を担っていることが確認されている。1995年の阪神・淡路大震災で災害ボランティアの存在に注目が集まり、2004年の新潟県中越地震においては、災害ボランティアをはじめとする自助的組織が主体となりまちづくり協議会などを立ち上げ、行政と地域住民の中間的な立場から、復興で不可避な行政復興と生活復興という間隙を埋めるような役割を果たすまでに至っている。3.11から3年経過しようとする現在においても、3.11の直後から役割を変化させながら、継続して地域に関わり続け、そして地域再生・まちづくりというフェーズにおいても、地域住民との信頼関係を構築しつつ、地域再生の1つの側面を担うような事例も散見され、災害復興とまちづくりに新たな方法論的視点が浮かび上がってきているように思える。
本稿は、3.11以後の宮城県石巻市で実践活動を継続している一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター(以下、ピースボート石巻)への継続的な参与観察ならびにヒアリング内容を分析しながら、同活動が果たしている役割を一例に据え、災害ボランティアのあり方と地域再生における意義・課題について考察したものである。
総p.90 pp.20-24
森明人,岡正彦