本研究の目的は、被災地で取り組まれている様々な「もの作り」活動が、被災高齢者の健康状態や生きがい、生活再建にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることである。対象は、被災地沿岸に活動拠点を置き、「もの作り」活動に参加している高齢女性で、特に在宅で生活する3名を対象とした。方法は、対象者3名に対して半構造化面接を実施した。質的研究の手法を用いて分析をした。結果として、10個のカテゴリーが得られ、それらは7つのポジティブなカテゴリーと3つのネガティブなカテゴリーに分類された。ポジティブなカテゴリーとしては、「仕事・働くこと」、「人との交流・つながり」、「収入・お金がもらえること」、「新しい経験や行動範囲の拡がり」、「人の役に立っていることへの実感と生きがい化」、「自らの年齢・身体・病気への関心」、「コミュニティ・スペースの存在」である。ネガティブなカテゴリーとしては、「生活にかかわる様々な不安・変化」、「行政の対応への不満」、「震災後の辛かった頃の思い出」であった。結論として、近隣住民とのコミュニティが崩壊した在宅被災高齢者にとって「もの作り」活動は、特に生活の不活発化を予防する有用な役割を担った一手段であるとことが推察された。
総p.342p.159-174