本研究は,難聴の発見が遅れ,1歳11ヶ月のときに感音性高度難聴と診断された2歳児を対象として,母音の特徴を音響分析によって調査し,難聴幼児の発声発語指導の基礎資料を得ることを目的とした。対象児が2歳0ヶ月から2歳2ヶ月までの間,遊び場面において自発的に表出された母音様音声を抽出して,音響分析によって第1フォルマントと第2フォルマントを調べ,音響的母音空間を確認した。その結果,/a/の語音において空間が広く,明瞭度が低いことが示された。難聴幼児への発声発語指導においては,聴覚活用を促進していくとともに視覚的手がかりも用いながら,母音の構音動作の習得を進めていくことが重要であることが示唆された。
pp.1-7